棋士の変調
名人戦
去年の名人戦と今年の名人戦、渡辺名人が齋藤八段を挑戦者に迎える構図は同じなのに、なんか雰囲気が違わないですか?
去年はスコアこそ4ー1でしたが、結構熱戦が多かった印象なんです(あくまで印象ですが)。今年は、なんか一方的。
予測勝敗確率
既報の通り、2021年データを用いたBTモデルでも、レーティングでも、両対局者の順位は渡辺名人2位で齋藤八段5位なので、渡辺名人の勝利の確率の方が高いのは確かなんです。
2021年のプロ棋戦のデータを解析した(1) - たなかし@観る将×データ解析練習場
2021年BTモデルから割り出される渡辺名人の対局勝ちの確率は63%ちょいで、7番勝負の場合、渡辺名人ー齋藤八段の勝敗スコアの確率は、以下の通りです。
- 4-0:16.1%
- 4-1:23.6%
- 4-2:21.6%
- 4-3:15.9%
- 3-4:9.2%
- 2-4:7.2%
- 1-4:4.6%
- 0-4:1.8%
4-1というスコアは思った以上に妥当っぽいのですが、とはいえ、齋藤八段が7番勝負でスイープされる確率はそれほど高くないはずなんです。
少なくとも上位陣の並びはBTモデルでもレーティングでも同じなので、レーティングを用いても似たような確率が計算されるのではないでしょうか。
齋藤八段の調子
私が一つ印象として抱いているのは、齋藤八段は調子を落としているのではないかってことです。
最近10局は以下の通りです。()内の数値はBTモデルから予想される対局勝ち確率です。
- ○羽生九段(62.5%)
- ○井上九段(90.3%)
- ○豊島九段(46.2%)
- ○藤井猛九段(82.2%)
- ●糸谷八段(59.8%)
- ●出口六段(51.3%)
- ●出口六段(51.3%)
- ●渡辺名人(36.7%)
- ○郷田九段(66.7%)
- ●渡辺名人(36.7%)
目立つのは勝利確率の方が高いはずの糸谷八段ー出口六段ー出口六段で三連敗しているところですかね。この三連敗は約10%の確率の事象ですから、私の感覚もそんなにおかしくないように思います。
調子が悪くなるきっかけー順位戦の勝ち抜け棋士
この糸谷八段戦、A級の最終局でしたね。豊島九段戦で挑戦が決定していたので、齋藤八段にとっては勝ち抜けによる「消化試合」ではありました。
順位戦はリーグ戦なので、勝ち抜けによる消化試合は散見されます。確か昨年度は齋藤八段以外には、
- 中村七段(B2)
- 澤田七段(B2)
- 及川七段(C1)
- 西田五段(C2)
が勝ち抜け消化試合を持っていましたが、勝ち抜け後の消化試合で負けていないのはこの中で澤田七段だけなんですよね。
該当棋士の最近の対局結果を確認しておきましょうか。
まずは中村七段ですが、BTモデル順位は33位です。以下対局結果の()内は、BTモデル順位になります。
- ●藤井猛九段(77位)
- ○三浦九段(39位)
- ○中座七段(149位)
- ○大平六段(151位)
- ○渡辺正六段(135位)
- ●鈴木九段(71位)
- ○鈴木九段(71位)
- ●金井六段(120位)
- ○阿部健七段(127位)
- ●真田八段(82位)
澤田七段は12位です。
- ●里見女流(111位)
- ○村田六段(80位)
- ○折田四段(51位)
- ○行方九段(65位)
- ○糸谷八段(13位)
- ●池永五段(27位)
- ○千田七段(38位)
- ○千葉七段(61位)
- ●今泉五段(72位)
- ○久保九段(34位)
BTモデルでは女流棋士もランキングに含まれているので、里見女流にも順位がついています。続いて及川七段(70位)です。
- ●高野智六段(42位)
- ○行方九段(65位)
- ○高野秀六段(131位)
- ●高野智六段(42位)
- ○青嶋六段(37位)昇級決定
- ○阿久津八段(59位)
- ●門倉六段(85位)
- ●片上七段(106位)
- ●松尾八段(44位)
- ●高見七段(60位)
そして西田五段(16位)です。
- ○谷川九段(110位)
- ○船江六段(63位)
- ○島本五段(156位)
- ○都成七段(75位)
- ○八代七段(7位)
- ●石田五段(83位)
- ●高田四段(93位)
- ○佐々木慎七段(54位)
- ○宮本五段(88位)
- ●永瀬王座(3位)
この中では澤田七段が安定しているように見えますが、中村七段や及川七段は特に調子を落としているように見えます。